卒業III 【其ノ四】
¥400
十四年間にも及ぶ学生生活を経て社会人へと旅立つ記念すべき門出の日…、それが卒業式。勿論お祝いのめでたき日なのであるが、どこか一抹の寂しさを感じてしまうのは何故なのだろうか…。大人っぽい紫紺の袴姿を身にまとった君の姿は実に凛としていて眩し過ぎるくらいに美しい。この日の、この姿をいつまでもずっと瞳に焼き付けたいと願うばかりだ。卒業式が終わり、帰って来た君を袴姿の抱きしめる。外はまだ肌寒いが、式典中は暑くて汗をかいたのだろう。「シャワーも浴びてないのに…ダメ…恥ずかしい…」そんな言葉には耳を貸さずに責め立てる。ダメだと言いながら、その艶やかな唇からは次第に吐息が漏れてくる…。これから社会へ出て、大人の階段を一歩踏み出して行く君の、今この瞬間を刹那的に抱きしめる。いつにも増して荒々しく、そして激しく…そうすることで、この時間が永遠のものになればいいのにと胸の中で呟くのだった。